・・ 「北千住S邸」1年点検 ・・ |
1月29日(水) |
東京の下町には、いまだに密集して家が建ち、火災が起こったらどうなるんだろう?というような細街路に面した敷地がいっぱいありますが、その細街路は実は誰かの土地であることが多い。昔からみんなで使ってきたので、自分の土地だからといって、通路をぐことはできないということのようです。 本来、家を建てたら敷地の残りは自分の庭ですが、ここでは通路として近隣に使用されてしまうのが暗黙の慣習のようです。そんな慣習が今も持続しているならば、昔の長屋のごとくお互いの気配を感じ、おもいやりながらの開放的な暮らしができるのかと思いきや、最近はそうでもないようです。昔からの住人ならばお互いをよく知っているのですが、アパートや外国人など見知らぬ顔が増えてきて、めっきり閉鎖的になってきたとか。また住人の高齢化もかなり進んで、町に活気はあまりないのです。 |
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そんな場所に住む老夫婦のための住宅が「北千住S邸」です。約23坪の敷地に3階建ての住まい。
1階は絶望的な日照条件から、あまり快適な生活を営むことが困難と判断して、2階を主な生活空間とすることを提案し、老後の不安の解消のために、階段を緩く設計し、将来のエレベーター設置のスペースをプランの中に確保することにしました。 また、2階でも日照条件は悪いため、南側のリビングの上部を吹抜けにして採光を取り込み、北側の水廻りも高い天井と高窓で景色と明るさを取り込んだ住宅です。 |
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新しい家での生活1年のご感想は、嬉しいことにこちらの狙い通りで、 とても快適に過ごせているとの言葉をいただきました。
『2階をキッチンと居間にしてよかった。とても明るい。吹抜けが利いているよね。吹抜けは寒いのかと思っていたけど、鈴木さんに言われた通り床暖房で暖かいし、北側の水廻りも暗くなくて快適。朝、空の様子が見えることがなにより嬉しい。高い天井のおかげで洗濯物は室内干しで十分だよ。夏には荒川の花火がよく見えるしね。キッチンの取り回しや食品庫の配置なども使いやすく、遊びに来た近所の方にも好評なのよ。』とのこと。
自分より高齢の方の住宅の設計は、自分でもまだ体験したことがない未来の世界のことですから難しいのですが、人生の先輩である方からの批評はありがたいものです。そういえばこの家には「片づけの解剖図鑑」 の内容を結構盛り込んで設計している家でした。あ、それなのにSさんに本の話するの忘れました! |
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2階 居間の吹抜け |
2階 ダイニング |
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3階 屋根付きテラス |
3階の書斎より見た居間 |