「真っ暗な中で何が見えるかな・・」昨年12月、冬山登山できそうな防寒着で身を包み、奈良・春日大社で880年以上続く真夜中の神秘の行事、若宮おん祭の遷幸の儀〜暁祭を体験したくて、二の鳥居に集まった行列の中でそんなことを考えてました。
灯りを点すことが許されない祭、スマホの灯りも例外なし! もちろん写真撮影なんて以ての外! 真っ暗闇の中、若宮様の行列の後について参道を1時間歩かなければいけません。
開始15分前、境内の灯りがすべて消え、人々からどよめきが。そして目の前に広がる暗闇!だんだん目が慣れ、参道がぼぉ〜と白く見え、人もどこに居るかはわかるように。月明かりもないのに人の目は凄いものだと感心していると遠くから人の気配。いよいよ若宮様の行列です。
先導者二人は参道両端に小さく火のついた小枝で結界線を引きながら進んできます。暗闇だとその小さな火も明るくよく見えました。 次に不思議な香りが漂いはじめ、公家衣の人が一人、お香を焚きながらゆっくりと通り過ぎました。 耳に雅楽の音色、雅楽師達が近づいてきます。 なんだか本当に平安時代に迷い込んだかのような不思議さ、神秘的な空気感。その後も暗闇なのに通り過ぎる人の衣装が見え、若宮様の行列の後に続いて歩く際も、つまずく事なく御旅所までたどり着いた頃には、神秘的なお祭の中に居る感動と、それとは別に、灯りの在り方を考えさせられました。
人は、灯りに心が動きます。 キラキラ豪華なイルミネーションに、遠くに見える灯台の灯りに、小さな蝋燭の灯りにも、大きくても小さくてもその様々な灯りすべてにこころ動かし、何かを感じ、スペシャルな気持ちになります。 暮らしの中では中々そうはいきません。 家事や子育て、勉強、読書と、感動よりも作業を支える灯りが求められます。 それでも住宅の照明計画では器具の見えない建築化照明をどこか1箇所でも取り入れて、住む人がスペシャルな気分になれる暮らしの演出をするようにしています。灯で心癒されるちょっとした時間、大切だと思うからです。 そして今回のおん祭りで知った引き算の灯り。灯りの使い方が増えそうです。
美しく照らすことばかりでなく、ともしびのような小さな灯で心のマッサージ空間ができるといいです。 貴方の家はどんな灯りですか? |