うりり〜ん日記 〜〜〜〜〜〜

 2002.10.1(火曜日)

ある日、突然

案というのは、ある日、突然沸いてくる。
ある物件のプランをすでに5案ほど考えてきて、それでもこちらも納得できない、クライアントも使い方の事情が変わってくる。
それでまた新しいプランを考える。
何週間も、頭の中にモヤモヤとあるままで、スケッチをしてもなかなかまとまらずAM3時4時。
もう一度、敷地のレベルを正確に引いてみる。
「距離が短くてスロープは取れないなあ」などと、鉛筆をぐるぐるこねくりまわして、それでもだめ。
仕方が無くて寝る。
朝起きて、ぱっと黄色いトレーシングペーパーに向かうと、なぜかひらめく!
「あ、そうか、こっちからこういう風に入れば、、、おお、うまくまとまる、、、 これは良い!」とすらーすらとまとまっていく。
それからは爆発的に細かい部分や、収まり、要望にあった家具の置く位置、ピアノの置く位置、浴室の換気や窓から見える隣地の緑を借景にして、、、、、、。むふふと満足げに事務所に出勤。
さっそく所員にプランを説明。うまく説明できるときはうまくいっている証拠。
すぐに模型にしてみよう。のぞいてみるとどうかな?おお、なかなか良いではないか、光の入り方をもう少し、、、、トップライトをここにとって、、、、。
できたー!。 

  さて、メールでクライアントに打ち合わせの日程を打診しよう。
とまあ、こんな風に突如、完成型に近づいていくこともあります。
その間土曜日も日曜日も頭から鬱積しているもやもやしたものがすーっと晴れていくのは 爽快です。
(あまりの喜びに書いてしまいました。7月から日記を書いていないのは、こうした作業が、連続していたからにほかなりません。)

 2002.10.2(水曜日)

台 風

先日の台風で、雨のひどかった相模原のクライアントから電話が入った。
すでに3年経っている住宅。「屋上下の部屋に雨が入ってきたんですが!」
ええ?、住宅であってはならない雨漏りが!??。そんなはずはない、、、、。しかしどうして?と電話口でその住宅のディテールを思い出す。
もしかすると、、、、と予想は出来たので「排水は流れているか確認できませんか?」と聞いたものの、奥様にはどこのことやら?印。
早速決断して「すぐに行きます。1時間くらいかかるけど待っててください!」と車を走らせた。
すごいどしゃ降りの中、道路は冠水状態で、川になっている。
こりゃすごい、、、、。
到着して、屋上に上って懐中電灯で照らしてみると、デッキのすのこ下に確かに水がたまって、プールになって、窓まであがっている。
これは!とすぐさま思いつき、ドレン(排水のふた)を見てみると、ゴミが詰まって、排水できないでいる。
「これが原因だ!」
とゴミを手で取り、目皿をはずすと、なんのことはなく、一気に水が引いていきました。

3年間で、知らず知らずのうちに目皿に細かいゴミが詰まって、排水口の蓋をしてしまっていたのです。
いやー、これは盲点でした。定期的にお掃除をお願いして一見落着でした。
木造で半階レベルをスキップさせて屋上をよく作る我が事務所としては、これは、他の物件も点検しておいたほうが良いとばかり、その他の住宅にも順次回って行きました。
(夜中にすみませんでした。)「巡回して点検に来ましたー!」結果から言うと他の住宅ではプールになっているところはなくほっとしましたが、やはりゴミが少したまっている所もあり、これからは定期的な清掃を念押ししていかないと、これは台風のたびに巡回することになってしまいます。
屋上を作る場合は事務所基準でこれからは、「屋上デッキ床の横引き排水口には、目皿をつけないこと、排水口がいつでも見えるようにすること」 に改訂しました。

(こんな事務所の内情を書いて良いのですか?)(By 所員)


 2002.10.3(木曜日)

E-MailよりFace to Face

後期になると大学で担当している非常勤講師の授業が始まる。
毎週その日はくたくたになるまで学生の図面のチェックとスケッチを見ながらのディスカッション。
今年はやる気のある学生が多いといいなあ。
毎年方針を心の中ではきめて取り組んでいますが、昨年は「ボトムアップ」でした。で、今年の自己テーマは「対話」にしようと決めました。
すこしでも考えていること、思いついたことを話しながら、会話しながらイメージを膨らましていく過程を訓練してもらいたいなと考えたからです。
最近大事だと思うのは、携帯電話のメールでのやりとりなどではなく、実際に会話して相手に意思伝達をしつつ、相手の考えていることを組みとりながら、学びつつ発展させていく能力が、現場監理にでていると本当に大事だと思うからです。

現場にでていると、大工や職人に図面の意志を伝えたり、間違いを指摘されての訂正や、収まらないところを考えたりのハードな監理をするためには、職人ときちんと会話して、お互い納得して、進められる能力が必要だからです。職人も人間ですから、こちらが「やれ!」と一方的に言っても、できないものはできないと言いますし、その理由も明確ですから、それに対して、こちらもポケットを用意しておかないと、物別れでは現場が止まってしまい困ります。

見積もりによって、決められた枠の中で仕様を決めて、細部を図面で決めているのですから、十分に練って、検討して図面化しているのですが、やはり上棟して現場を見ているうちに、収まりの不具合や難しく考えすぎていた所が見えてきて、修正したくなります。
しかし、大工は一度図面を受け取れば、実際に作る過程での効率や収まりで進めるわけですから、ガンガン事務所に指摘してきます。その内容の中には、こちらがその通りだと思って、従うものもあれば、 譲れないところもあります。
大工さんは事務所が意見を聞かない部分は、だいたい手間のかかる所ですから、ぶつぶつ言ったりして、現場に味方が一人もいない状態でさらされるのことが多いとき、「会話・対話」が出来る人はそれでもコミュニケーションをとりながら、双方納得する出口を見つけるのですが、 対話が出来ない人は、憮然としてそれ以上関われなくなります。
そういう意味では我が事務所のスタッフはよくやってくれていますが、つくづくやりとりの「会話・対話」が生きていく上でも大事だと思う次第です。
というわけで、今年は学生さんに「会話・対話」を学んでいただきたい。



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