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つれづれ日記

2014/8月

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22日 スマートハウス・・ / 25日 木製サッシュ・・ / 26日 木製サッシュ工場へ・・

・・ スマートハウス ・・ 8月22日(金)
 最近、テレビやラジオで『スマートハウス』という言葉をよく耳にする。いわゆる家庭での消費エネルギーを効率的に削減し「お財布にも環境にもやさしい家」と称する住宅のことである。

主にハウスメーカー系がいち早く目をつけ、積極的に売り出している。なお国交省は『スマートハウス』とは言わず、もう少し自然環境の良さを建築の作り方で取り入れることも含めて『自立循環型住宅』という名前で推奨している。

大手メーカーによるマスメディアに対する情報発進力はここぞとばかりにすざましいもので、イメージの良いなじみの芸能人を採用して、『これが最先端住宅だ!』のように祭り上げ、集客を誘っている。
スマートハウス
 また国の施策では、追加設備を促す大手ハウスメーカーの意向ばかりを積極的に採用してる現状を目の当たりにすると、優秀なはずの官僚は自分の頭で考えることをしなくなっているのかと不思議に思うことがある。そこに何か革新的なものがあるかというと、私の目から見れば、特にないのだ。。。強いて言えばIT技術?を用いたHEMS(ホーム・エネルギー・マジメント・システム)=つまりエネルギーの使用状況を見える化した装置が新しいくらい。
 このHEMSを家に導入して、太陽光発電・蓄電・全熱換気装置等の設備機械を増やすことだけが環境と財布に貢献できるような印象を持たせているが、本当にそうなのか冷静に考えて欲しい。基本的に住宅自体の断熱・気密・遮熱・採光・通気・換気を建築的にきちんと対策すれば、住まいは十分に省エネで快適になるのに、重装備の機械を加えないと快適にならないかのように話すのがものすごく気に入らない。余分な設備投資をしない家ではいくら最新ITシステムHEMSだって全くもって無用の長物なのだ。

 設計した住宅が住宅系雑誌に載るたびに出版社がその冊子を送ってくれるのだが、その雑誌の主なスポンサーは当然大手メーカー。誌面の99%はその最新設備が如何に素晴らしいかという内容で占められる。でも巻頭には私たちの設計内容を掲載する。彼らは上手に、こんな小さな設計事務所のアイディアを客寄せパンダにして利用しているわけだ。それ自体はスマート?といえるかもな〜と、心の中で苦笑いして今日も仕事を始める。 。。



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・・ 木製サッシュ ・・ 8月25日(月)
 お客様との初回の打ち合わせでは、まず事務所の打ち合わせのテーブルに敷地の情報がならべられる。地型は?道路は?高低差は?排水は?など、基本的なインフラの状況をすぐさま確認。
よしよし、なかなかイメージがわいてきた!とばかりにルンルンする私。
その後、うちのスタッフが敷地情報をネットで調べてくれるのだが、
「え!?準防火地域かぁ。うーん、まいった。どうしよう・・・ 」
こんな会話をするようになったのはこの1年あまり。
住宅用防火サッシュが2014年から使えなくなってからの悩み事である。

 サッシュメーカーのすべてが、防火の基準を満たしていないまま製品として市場に出していたというのだから驚きだが、それが社会問題にならないこともまた恐ろしい。この業界の社会的な力の強さが窺い知れる。
そのことは主題でないのでまたの機会にしておくが、この影響で2013年中の発注までで現行製品サッシュは終了し、これからは準防火地域に対応するサッシュが完全に新しくなった。 普通は、新しい製品になると現行を引き継ぐべく何らかの対策が施されるのだが今回は違った。

まずサイズの選択肢がない。
例えば以前はサッシュの窓幅を2600mmまで広げられたのだが、新製品は1650mmまでしかない。高さ寸法もしかり、窓の形式もバリエーションがほとんどない始末。カタログを見た時は愕然とした。

これでは望むような窓の設計ができないではないか!
その時から頭の中は、準防火地域で設計する時にどうするか?いやいや準防火地域の設計はしばらく断ったほうがよいのか?などと頭を悩ませていた。
幸い、昨年から準防火地域での設計依頼はひとつもなく、その状況に迫られることなく済んでいたのだが、この悩みはずっと抱いたままだった。

そんなあるとき、展示会場で素敵な木製サッシュを見た。
「でもなあ、準防火地域では木製サッシュは使えないでしょ?」という私の投げ掛けに案内者はニヤッとして「いえいえ、サイズの幅も自由ですし、防火認定も取れているから大丈夫ですよ。」という。

説明を聞いてみるとどうやら、サイズごとに耐火試験をうけて認定を取るアルミサッシュとは違い、木製サッシュは規定の幅までの範囲で認定を取っているというではないか!? これだ! 私の目の前は急に開けた気がした。

〜 つづく 〜 



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・・ 木製サッシュ工場へ ・・ 8月26日(火)
木製サッシュ工場
 それではまず工場を見に行こう!と思い、木製サッシュを訪ねて山形へ。

 建具屋から始まったこの会社は、木製サッシュを造り始めてすでに20年。
全国に手広く製品を納品しているという。近代的にオートメーション化された大きな工場なんだろうと想像し、横浜から向いました。
実はこの時、危うく新幹線に乗り遅れそうになって東京までタクシーを跳ばして待ち合わせていた同行者の肝を冷やした面白話もあるけどそれは横道に逸れるから省略。
 降り立った駅のホームの立派な米沢牛の像に目を奪われつつ改札を出ると、送迎のために既に御社長が待機されていました。社長自らが運転する車に乗り込み、いざ工場へ!のどかな景色の中に建っていたのは想像していたオートメーション化された大規模工場ではなく、手作業で少人数がコツコツと作業している規模の工場。建物正面には人の背丈の2倍以上ある木製サッシュが設けられて圧巻。こんなに大型サイズなのに動きはとてもスムーズ。
 工場内にある事務所には実物の木製サッシュ見本が所狭しと立て掛けてあり、気密性を保持するための見慣れない開閉型式に一同興味津々。そして建具の厚さにもビックリ、凄く厚い。

米沢牛
アルミや樹脂サッシュに比べて木製サッシュの良さは、見た目のデザイン性だけでなく、高い断熱性能+気密精度があり機能的にも優れている点、まだ発展途中で可能性は広がっていることなど説明を受けました。
工場の棚にずらーりと並ぶUFO円盤のような金属は、木製サッシュ製作には無くては成らない仕口を削り出す金型。だけど金型で削り出した後は人の手で1つ1つ切り口のバリを取り、ヤスリを掛けて仕上げ、そして塗装、これは納品までに時間が掛かる・・。

木製サッシュは金属製・樹脂製に比べるとかなりのコスト高。でも性能もデザイン性も兼ね備えて良い上、国の防火認定もクリアしているのだから当たり前の対価ですね。
一般的にはなぜかあまり話題に上らない「2020年からの低炭素住宅の義務化」それも見据えて頭を切り替えていかなければいけないし、今回見学させて頂いた木製サッシュをお客さんの希望もあって採用することに決めました。納品されるのが楽しみ。。

 
巨大引戸 木製サッシュ 金型



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