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鈴木アトリエ/つれづれ日記
つれづれ日記

2012/10月

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15日 麦・・/ 26日 吉田五十八

・・  ・・ 10月15日(月)
 つい何週間前まで「いつまで暑いのか・・」と、うんざりしていたのにパタっと手のひらを返したように夏から秋に切り替わり、いい季節になりました。
生後3ヶ月で我家にきた「麦」は季節に関係なく食欲旺盛で嬉しい限りですが、580gだった体重はもう2kg近くなり、成長の早さに、あまり早く大人にならないでと思う気持ちも少々。

 先月には南伊豆の「三猿堂」に車で同行し、大自然の中の巨大サイズの昆虫達との死闘を繰り広げ、益々凛々しく、雄々しくなっています。(麦は女の子ですが)この分なら事務所デビューも近そうです。でもあまりに元気すぎて模型を破壊しなければいいけど・・・
麦、三猿堂へ
 9月、南伊豆の「三猿堂」に車で同行。車移動に怯えないか心配しましたが取越苦労だったようです。
飛び去る景色に目を凝らし、子猫の旺盛な好奇心さを発揮してました。
麦10月

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・・ 吉田五十八 ・・ 10月26日(金)
 先月下旬に五島美術館を見学する機会がありました。
私が活動委員をしている建築士会の委員会主催の定期的に行っている美術館バックヤードツアーの一環で、その美術館関係者による設計に関する苦労話やエピソードを交えた貴重な解説講演と食事が付くスペシャル見学会です。この時、五島美術館は開館50年を迎えた2010年末からの改修のために休館中で、なんと貸し切り見学!だったので、いつもの「壁の隅を見つめ、床にしゃがんで見入る姿」に不審な目を向けられ気兼ねすることなく見学ができました。

 設計は吉田五十八。日本の伝統的な建築に近代のエッセンスを融合させた独自のスタイルを確立した建築家です。一見すると『地味な古い建物』と見過ごしそうですが、これが実は隅々まで考え抜かれた繊細で品のある上質な建物です。庭園の植栽、照明器具、金物、運営時に使う什器にいたるまで、すべて吉田五十八の一貫した思想意匠で整い、しかも出しゃばらずそっと脇役として空間を支えています。
吉田五十八の建物に触れるのは初めてでしたが一気にファンになりました。

設計依頼時に、五島美術館創立者の五島慶太から「源氏物語絵巻」「紫式部日記絵巻」を展示すると聞いていた吉田五十八は絵巻に描かれている平安時代の意匠をさり気なくモチーフとして建物意匠に盛り込んでいます。たとえば下記の玄関エントランス。
五島美術館玄関
太い柱にホールブリックの壁、その前に行き止りの縁側、エントランスホール前に、唐突な数段の階段・・・
 一見、建築家の独りよがりな無骨なデザインと見られそうですが、実はこれは光源氏が夜な夜な通ってきては格子戸越しに意中の娘に部屋中に入れて欲しいと声を掛けた物語の有名な場面をモチーフにしたもの。平安時代の貴族の住まいである寝殿造りの意匠です。
 訪れた人にエントランスで平安時代にタイムトリップさせ、これから見る絵巻展示物への期待をより膨らませるようにしている、建築装置での粋な計らいなのです。
その他にも「朽木文様」などの平安時代の文様をさり気なく取り入れたり、目を見開いていないとそのキーは見逃してしまうものばかり。一つづつあげていったら日が暮れそうですので、是非ご自分の目で確かめに足を運んでみて下さい。もうリニューアルオープンしているはず。絢爛豪華なわけじゃなく、日本の(侘・寂)を一貫して追求した上、1つ1つ意味を持って造り出されたディティールとそれを積み重ねて出来た上質な空間に触れる度、ただ、ただ、溜め息でした。


改装を実際に行っている建設会社の方の解説では、現状の意匠を忠実に守りながら増設部分は吉田五十八が生きていたらこうするだろうということを考え、その意匠を壊さずに良い建物を造りたいという意気込みがビシバシ伝わってきました。
 そして五島美術館に永年にわたり勤務されている名児耶さんの解説では、その話の隅々に五島美術館を愛する思いが迸り、建築のことはもちろん、所蔵品の魅力、2千円札の絵柄に所蔵の絵巻が使われたの時のエピソードなど、なかなか聞けない貴重で楽しい話を伺えました。そしてその話の締め括りは、
「いい建物はたとえ多少不便であっても、それを超越した魅力があり、いくら傷んでもお金を掛けて元通りに修繕したいと思わせる魅力があります。先輩達が愛し大切に守ってきた五島美術館を私はしっかり守っていきます。みなさんもそう思わせる建物を設計して下さい。」

 五島美術館が開館して52年、吉田五十八がこの世を去ってまもなく40年です。
今も尚、ここまで愛される建物を造った建築家の偉大さを深く感じました。

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